オーストラリアの学校 高校中学部活動事情 |
オーストラリアの部活動とそれを取り巻く環境に関して、多くの高校にたくさんの生徒を送ってきた経験から生徒の経験を踏まえて書きたいと思います。部活動は吹奏楽や美術などの文化部もありますが、説明をわかりやすくするためにスポーツ中心に書かせていただきます。(文化部であっても基本的には同じ状況だと思います。)
オーストラリアの高校に通っていた人、子供が学校に通っていた人の部活動に関しての経験はあくまでも、本人の経験したオーストラリアでの部活動に関して伝えることになってしまいます。公立に通っていた人と私立の名門に通っていた人ではオーストラリアの学校でのスポーツに関しての捉え方が大きく違うからです。また、公立高校のスポーツなどのシステムも州によっても異なります。
理解してほしいことは、オーストラリアには日本のような部活動はない。ということであり、スポーツを本格的にする機会が学校にはない。ということではないこと。
日本のような。という意味は
高校生であれば、夜9時まで平日に学校に残ってスポーツをすること。
サッカーの経験のない先生がサッカー部の顧問になること。
あくまでも勝ち負けに重点を置くこと。
親が必要以上に部活動に関わること。
まず、私が感じるオーストラリアに日本のような部活動がない理由は下記の理由になります。
学校が子供と関わる時間は8時から4時まで。というオーストラリア人の基本常識。
専門知識のない先生が生徒にスポーツを教えることが教育の観点から間違っていると感じていること。
先生が週末や放課後まで学校に残ってスポーツなどをやりたいと思わない。仕事とプライベートをはっきりと区別するべき。
要するに平日の午後5時以降、週末に生徒先生が学校にいるという状況は日本独自のものであり、オーストラリアをはじめ他の国では想像ができないことなので部活動が成り立たないということです。
オーストラリアの学校のスポーツへの取り組み
オーストラリアのスポーツの取り組みは公立と私立で大きく異なります。公立と私立の取り組みの違いは、下記の通りになります。
公立
州ごとにスポーツのエリートプログラムのカリキュラムのある学校もあります。そのエリートプログラムの中には週に10時間以上も授業があるものもあります。
スポーツのプログラムは、トップアスリートを養成するだけが目的ではなく、将来そのスポーツの指導者になるための指導法を学ぶ授業がある学校が多い。あくまでも教育の中でのスポーツという観点を持っています。
エリートプログラムの多くはトライアル等を受けて選抜されます。
私立
オーストラリアの私立の学校は個人の人格形成や実力の養成を行うことをアピールして生徒を集めいているので、バイオリンの個人レッスンやスポーツも個人競技などは特別講師を招き教えますが、集団スポーツのエリート養成のようなものはない学校が多いです。
その代わりに、私立のGSPのようなスポーツ交流や男子校、女子校のスポーツ協会、地域のスポーツ協会によるスポーツの交流会が盛んで、ほとんどの生徒が学校のクラブチームに所属しています。週末などに学校のグランド等で交流戦が行われております。
勝敗よりもスポーツを通した交流が目的であり、スポーツを楽しみながら友情関係をはぐくみ、親も子供の成長をスポーツを通して感じることができる機会という位置づけです。
また、オーストラリアでは学校単位の参加でのスポーツ大会があります。地域大会、地区大会、州大会、全国大会とつながりますが、多くの学校が練習なしのぶっつけ本番で戦います。選手も希望者を募集して、平等に試合にも出ます。
オーストラリアの私立のスポーツ交流戦等では、事前に試合のメンバーをポータルサイトやメールなどで各家庭に送ります。
全員が平等に試合に出るのが原則です。
クラブチームの充実
オーストラリアの場合は、クラブチームが充実しています。これは、オーストラリアがクラブチームが充実しているというよりも、日本のスポーツが中学や高校の学校単位のチーム編成に偏っているからだと感じます。
競技によってクラブチームの組織が異なりますが、サッカーであれば、地域リーグがあり、その地域リーグが年齢別に構成され、そのうえでランクをいくつかに分けて実力が拮抗したチームと戦うことになります。当然いい成績を収めたりすれば、昇格したり、個人昇格もあり、その中のプレミアリーグで活躍すれば、新たなセレクションに参加するようなシステムです。
水泳であれば、各地域のスイミングクラブに加入し、そこで練習をして、定期的に開かれる大会に参加します。個人競技の場合は、記録によって、上の大会に行けるかどうかが決まりますので、日本と大きな違いはありません。
その他の競技にしても、トップレベルの大会は学校の名前で出場するのではなく、あくまでもクラブの一員として参加することになります。ですので、チームの変更なども自由にできます。
個人的な感想
日本ではサッカーなどごく少数のスポーツ競技でクラブチームを持っていますが、各スポーツの高校生での一番大きな大会は高校単位の参加が義務付けられているのが現状です。
また、強いチームであれば当然勝利至上主義になり、試合に出れる生徒とそうでない生徒の格差が広がっていきます。ただ、残念ながら試合に出れない生徒が学校を転校することができないために在学中ほとんど試合には出場できない場合も珍しくありません。
また、部活は顧問をつけることにより、先生の負担は大きくなってしまいます。学校の部活は先生の犠牲の上に成り立っていることも問題かもしれません。スポーツの指導をしたい先生であれば問題はありませんが、そうでない先生までが顧問になって生徒の指導に当たるのは海外の常識からはかけ離れているような気がします。
部活動は学校の宣伝効果もあり、日本で部活動がなくなることは当分はないと思います。ただ、顧問の先生は外部から招へいするようにするとか、自由に参加できるクラブチームのようなものを充実させるようにして、マイナス点を改善していくようにしていければいいのではないかと思います。